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今日は沖縄旅行の二日目。
名護に一泊の予定。
帰宅したら、沖縄料理をちえ~るで再現できるといいな。

では、昨夜の続きをどうぞ。


『幻獣』その2

 そんな中、一人の小さな少年だけが、最初から私の味方をしてくれた。
 本当に無鉄砲で、やんちゃな奴だった。
 だが、今までの都会生活では、会ったこともない、キラキラした目をもつ男の子だった。
 彼のとりなしで、その場はどうにか事なきを得た。

 その後、子供同士の小さな諍いはすぐに終焉を迎えた。
 喧嘩も早いが、打ち解けるのも早い。
 それが子供の特権だ。
 やがて私たちは、何をするのも一緒という仲間同士の付き合いになっていった。

 だが、中でも一番といってよいほど遊んだ友達は、彼だった。
 私が空手を習い始めれば、彼もすぐに入門してきた。
 一緒に小学校に通い、休みの日には遠くに自転車で出かけ、向かいの山を探検し、炭焼き窯を秘密基地にした。
 今となっては、遠すぎる思い出になってしまった。

 一つ年下の彼は、或いは私を兄のように慕っていてくれたのかもしれない。
 いや、あの行動力と義侠心溢れる性格からすると、それは私の驕りか。
 彼の中にあるものは、荒削りで純粋な勇気、もしくは純然たる怒りの感情だったように思う。
 後年、それは彼の周囲の人間と、そして彼自身をも焼き焦がす。

 ある日、彼と二人、山倉にある巨大なダムに釣りに出かけた。
 朝まだき時分に到着したため、辺りはまだ闇に閉ざされていた。
 ところどころに点在する電灯の周りだけが、ぼんやりと薄明るく、それ以外は全て真っ暗だった。
 とても寒くて、じっとしていることができないくらいに冷え込んでいた。

 ダムは静かに眠っていた。
 水は穏やかに黒ずんでいた。
 だが、その水面には、白い蒸気がゆらゆらと幾本ものカーテンのように立ち上り、風にあおられ、ふわり、ふわりと、生きているかのように動き回り、音もなく岸に向かって吹き寄せられてくる。
 それは、あたかも幽霊たちが舞い踊っているかのような、不気味で、とても神秘的な光景だった。

 やがて燭光のような光が刺し染め、太陽が空を明るく輝かせると、ダムの水は透明さを増してゆき、いつの間にか、蒸気の亡霊たちは消え去った。

 新しい一日の始まりだ。
 寒さのせいばかりではなく、ぶるぶる震えていた私たちにとって、その日の朝の太陽は、心強い救世主のようだった。

 朝になれば、恐れるものなど何も無い。
 明るい光の下では、どんな化け物だって色を失い、逃げ出すもの。
 私たちは早速、釣りの道具を出して、太公望を決め込んだ。

 だが、その日に限って、何も釣れないのだ。


明日に続く・・・。

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