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今頃は札幌でゆっくりしている時分かな。
今回も妻がブログをアップできないので、予約投稿しておきます。
大学生の頃に書いた小説、いわゆる若書きってやつなのですが、お楽しみ頂けたら幸い・・・


「大きなのっぽの古時計」 ~その1~

 今ではもう、滅多に見られないけど、僕の家にはとても古くて大きな時計があったんだ。
 あの頃のことは、この時計と共によく覚えているよ。
 いつも廊下の片隅にジッと立っていて、小さかった僕らをいかめしそうに見下ろしていたものさ。
 僕らと言ったけど、僕には妹の恵子、十才と五才の弟の秀之の二人の兄弟がいるんだ。
 僕は長男で十二才。斉藤 始というのが僕の名前だ。
 その古時計について、少し話しておかなくちゃいけないな。
 それは亡くなったおじいちゃんのもので、もう全然、動かないんだけど、とても大切にされていたんだ。丈夫なマホガニー製で、すっかり黒ずんでいて、文字盤が大きくて、お腹の空洞部分には、金が処々落ちちゃった振り子がブラ下がっている。
 ホコリをかぶって汚いわって、お母さんが言うけど、捨てましょうよ、とは言わない。この前、お父さんに言ったら、
「バアさんが大切にしてるからねえ。」
と、お父さんは知らん顔。おじいちゃんの形見だからって、おばあちゃんが懐かしそうに目を細めるので、お母さんも本当のことは言い難かったみたい。おかげで、僕が小さかった頃、ナイフでいたずらして傷つけちゃった時も、そんなに怒られなかったけど。いつもドッシリと構えていて、なんだか、僕はシャクに触ったんだ。
 だって、いつも十二時を指したままだし、僕は小っちゃくて、文字盤に手が届かなかったからね。

 何の役にも立たない大きなのっぽの古時計。
 ぜんまいも切れちゃってて、ネジを巻いても動かない。
 おじいちゃんの形見の時計。

 でもね、その古時計が、急に動き出したんだ!
 その日は大晦日だった。
 外は大雪で、僕らはみんなして、NHKの紅白歌合戦を見ていた。弟の秀之まで、眠い目をこすって起きていたっけ。
 もうすぐ年が明ける。
 あと四秒、三秒、二秒、一秒、ゴーン。
 『明けましておめでとうございます。』
 テレビのアナウンサーが、白い息でしゃべってる。
 僕らも、おめでとうとか、今年もよろしくね、なんて言ってたら、
 コツ、コツ、コツ……
 何かの音がするんだ。
 なんだろう? と首をかしげていると、おばあちゃんが、あっと大きな声を出したんだ。
 どうしたの? って僕が聞くと、
「時計だよ。あの時計が動いてるんだよ。」
 すっごく怖い顔して、おばあちゃんが言うんだ。
「わあ、あの古時計、動くんだあ。」
 妹が喜んで席を立つ。僕もすぐに後から見に行ったけど、
 コツ、コツ、コツ……
と、振り子に合わせて、ほんのちょっとずつ針が動くのが分かって、すっごくドキドキしたよ。
「さあ、みんなもう寝なさい。」
 お父さんが大声で言ったので、僕らは一目散にベッドに入ったけど、なんだか胸がはずんじゃって、全然眠くならないんだ。明日、テストって時には、すぐ眠くなって困っちゃうのに、こういう特別な日ってなかなか眠れないでしょう? だから僕らはその後も、ずっとお話してたんだ。
 やがて、お父さんとお母さんが二階に上がってきて、何か言い争っているのが聞こえてきた。
「おい、恵子、ちょっと見てこいよ。」
 小さかった僕らは、大人のケンカにもすごく興味があった。
 恵子が暫くして帰ってくると、僕はベッドから飛び出して、恵子とヒソヒソ話を始めた。
「どうだった?」
「うん、それがね……」
 恵子は、いつもらしくない。
「だから、どうだったんだよ!」
 秀之もゴソゴソとベッドから下りてきて、僕らに加わった。
「変な話よ。あの時計、動いたでしょ。」
「うん。」
「だから、おばあちゃんが死んじゃうんだって。」
「え――っ!」
 僕らはブッたまげた。
「どうしてさ?」
「お母さんがね、お父さんに聞いてたの。おばあちゃん、自分で言ってたんだって。あの時計が動いたから、おばあちゃんは、もう、死ぬんだって。」
 僕は身をのり出した。
「そんなことあるかよ!」
「うん、お父さんも言ってたよ、そんなの迷信だって。でもね、お母さんが、じゃあ、どうして、おばあちゃん、そんなこと言うのって。そしたら、お父さん言ってた。前もね、おじいちゃんが死んだ時にね、あの時計、動いたんだって。」
「うそっ!」
 なあに、どうしたのって秀之がきいた。
「なんでもないよ。」
 僕はティッシュで鼻をかんだ。
「でも、おばあちゃんが死んじゃうとかって……」
「ううん、そんなことないわよ。さあヒデくん、もう寝ようね。」
 恵子が弟をベッドに上がらせた。
「もっと何か、他にも言ってなかった?」
 僕が聞くと、恵子が小声でささやいた。
「うん、あの時計がね、一周りして十二時になったら、もうダメなんだって……」
 その夜はなんだか寝つけなかった。
 恵子も眠れないみたいで、時々、寝返りをうっていた。

(続く)
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