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本日は最終日。
白川郷を見物しているんじゃないかな。
家に到着するのが何時になるのか検討がつきません。
メールのお返事は、明日になると思います。
すみませんが、もう少しお時間をくださいませ。

では、若き日の冒険、最終章をどうぞ

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これが下界の旅先で、宿に断られたというのならまだいい。
一応、高山なんである。
ここで断られたら、私ら一体どーしたらいいの?

幸い、私には幼い頃の記憶が鮮明に残っていた。
想定外の出来事だったが、頭脳をフル回転させ、
おかげですぐに気を取り直すことができた。

確か、雲取山には山頂に避難小屋がある。
ここからまだ相当先になるが、そこに行けばきっとなんとかなる!

だが、時間がない。太陽はもうすぐ沈みきる。
できれば、少しでも陽があるうちに行程を縮めておきたい。

もう、泣いていいやら、笑っていいやらって感じで、
今にも崩れそうになっている後輩を引きずるように立たせ、
赤い夕日が照らす山道を更なるペースで突き進んだ。

そうして、ぐったりした後輩を後ろに、
せっせときつい勾配を登り詰め、とうとう山頂に辿り着いた。

やった! 昔の通り、避難小屋がある!

すっかり辺りは暗くなり、
ボーっとしたシルエットで浮かぶように見えるその建屋が、
このときばかりは救いの主のように見えた。

この日の夜、雲取山の山頂から眺めた景色を
私は終生、忘れることができない。

空には満天の星空。
そして、眼下には関東地方の美しい夜景が、
宝石箱をひっくり返したかのような輝きで広がっていたのである。
これは、函館の夜景など、全く比較にならぬほど美しかった。
この時刻に、雲取山の山頂に立って、
下界を眺めることができた者だけが知っている、
貴重すぎるほどのシーンなのである。

だが、しかし・・・
気が狂いそうになるほど美麗な夜景だったが、
私らはそれをほんの数秒しか味わうことができなかった。

なんせ11月の山なんである。
しかも、そこは、遮るもののない、
高度2000mの吹きっさらしの山頂。
陽が落ちた後の寒さたるや、
これはもう、想像を絶するものがあった。

山小屋で飲もうと、ウィスキーを持っていった。
これで暖を取ろうと思ったのだが、
生のままのアルコールが胃の腑を焼くよりも早く、
体の芯に冷気が入り込んでしまう。
あまりに寒すぎて、ガチガチ震えて歯の根が全く合わない。

夜が更けていくにつれ、
風がビュービューと音を立てて山小屋を揺する。
真っ暗闇の小屋の中、聞こえるのは木々がこすれる不気味な音だけ。
そして、なにより堪えるのは、この骨身を削るような寒さ。
なぜだか小屋の中にまで、冷たい風の流れが感じられる。
この日の夜は、まるで悪夢でも見ているような思いだった。

用意がいい後輩は、持参した寝袋にくるまって、
さっさと眠りの国に旅立っていった。
一方、私は新聞紙を体に巻いて、少しでも温まろうとしたのだが、
痛いほどの寒さの中、結局、まんじりともできずに朝を迎えてしまった。

そうして新しい太陽の光が刺し染める中。
徐々に周囲が明るくなって、辺りの様子がくっきりしてくるにつれて、
夜には分からなかったことが明らかになっていった。

なんと、この避難小屋、屋根と壁の間が
1メートルほども開いていたのである!

どうりで寒いわけだ。
これじゃ、野宿したのと全く大差ないではないか。

寝不足で何度も谷底に転げ落ちそうになりながら、どうにか山を下りた。
眠気を誘う東海自然歩道の平坦な山道が、
このときはたいそう辛いものに感じた。

この頃、山行きを終えて里に下りると、
氷川駅(今の奥多摩駅)のそばを流れる日原川の河原で
一服するのが常だった。
その河原には、ひとつだけ飛びぬけてデカい岩石があった。
2mを超えるその岩石に、むりやりよじ登って、
てっぺんで胡坐をかいてくつろぐ。
ここがいつも私の指定席だった。

そうして、つい先ほどまで繰り広げた冒険の旅を振り返り、
束の間の感慨にふける。
よく生き延びたなぁ、なんて、当時は思いもしなかった。

楽しかったなぁ、またやりたいなぁ。
いつもそんな気持ちで満たされていた。

今でもあのデカい岩石は残っているんだろうか。
できれば、もう一度、見てみたいものだ。

最後に。
このときの山行きで詠んだ一句である。

 山が哭く 北風吠える 俺も泣く




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